先行、テキスト公開 10月9日 『鏡はよこにひび割れて』Part-4

ある時代のアメリカ人にとって「先祖のふるさと」は、イギリスでした。19世紀中旬から末にかけて、ジャガイモ飢饉による飢餓から逃れるために、新大陸へと移住した先祖の地を訪れることは、多くのアメリカ人にとっての夢だったのでしょう。 アメリカ人女優…

先行、テキスト公開 10月9日 『鏡はよこにひび割れて』Part-3

第一次世界大戦、第二次世界大戦とヨーロッパの諸国は国力の低下の時代に入りました。それは、英国とて例外ではありません。国土が戦場にならなかった新興国・アメリカとの経済力の差は、如実になってきます。 1930年代を境として、英国よりも国力が上回った…

先行、テキスト公開 10月9日 『鏡はよこにひび割れて』Part-2

パート2のテキストは、ミス・マープルの人物像に焦点をあてた一枚となっています。 ポアロのモデルが第一次世界大戦後のベルギーからの難民でしたが、ミスマープルのモデルは、アガサの自伝によりますと、自分のお祖母さんに似ているということです。 けれど…

先行、テキスト公開 10月9日 『鏡はよこにひび割れて』Part-1

次回のアガサセミナーのテキスト原案がようやく出来上がりました。 毎回、本番1か月を切ると胃が痛くなります。回を重ねるごとにテキスト作りが遅く なっているような気がしています。どうしたもんでしょう? まず一枚目は、アガサ作品に登場する主だった探…

鏡は横にひび割れて・マリーナ グレッグが見た名画とは

第5章 P83 原文P71~72 ヘザーバドッコクは、自分の得意話を終わりかかっているところだった。今度のマリーナの反応は機械的ではなかった。彼女の視線が階段の中途あたりの壁にくぎ付けにされているみたいだった。大きく目を開いており、顔色も青ざめていた。…

イギリスにあこがれたアメリカ人女優 鏡は横にひび割れて・原文より

第二次世界大戦が終わり、消耗しきったヨーロッパに比べ本土が戦場とならなかったアメリカは、西欧諸国に復興援助を与えるなど、国力の差が顕著となります。次の表は各国の一人当たりのGDPを表した表です。 これを参考にしますと、1912~1913年あたりを分岐…

ホームズとポアロの時代

シャーロックホームズをこの世に送ったコナンドイルは、1859年 エジンバラに産まれました。一方、ポアロやマープルの生みの親、アガサクリスティーは1890年、イギリス南西部トーキーで生まれます。この30年の時の流れは、イギリスの風景を根本的に変えること…

ミス・マープルのモデル

ミス・マープルという人は、不思議なおばあさんで、イギリスの典型的田舎の村(セントメアリーミードという架空の村)に住み、日ごろは編み物に精を出すどこにでもいそうな、静かなおばあさんです。 けれど、一旦この村に怪しい事件が起きると、今までため込…

鏡は横にひび割れて、動機は風疹

第5章 P81 原文P70 うれしくて、うれしくて、わくわくしていたんですもの。あの頃は私も小娘でしたし。素顔のマリーナ・グレッグに逢えるのだと思いますとね! 私は前からあなたの熱狂的なファンだったのですから。 I was thrilled, you know, absolutely thr…

アガサ作品に登場したスターたち  アンジェラ・ランズベリー

映画”クリスタル殺人事件” 原題・鏡は横にひび割れて、でミス・マープルを演じたアンジェラ・ランズベリー、1925年生まれの女優さんです。(女性に年齢のことは失礼ですが。) クリスタル殺人事件は1980年の作品ということで、当時は55歳。少々化粧で実年齢…

アガサ作品に登場したスターたち エリザベス・テイラー 

次回のセミナーに登場するアガサ作品は”鏡は横にひび割れて”ですが、映画化された作品のなかでは、いろいろな(?)事情で、題名が変更になっているものもあります。 1980年に製作された”クリスタル殺人事件”もその一つです。原題はMirror cracked. 作品にお…

第12回 教えてアガサ・セミナー

次回”教えてアガサセミナー”の、日取りが決まりました。(場所は未定です。) 第11回まで、おなじみの探偵エルキュールポアロが活躍する作品をテキストに使用していましたが、今回はミス・マープルを取り上げます。作品は”鏡は横にひび割れて”です。夏の暑さ…

参考資料 

作品”鏡は横にひび割れて”では、殺人の動機がマープルを悩ませます。しかし、被害者が良かれと思って行った行動が、犯人に一生の悔やみと苦しみを与えてしまった事実にマープルはたどり着きます。 19世紀後半から20世紀にかけて、ヨーロッパやオーストラリア…

ジョージ王朝

作品 ”鏡は横にひび割れて・1962年発表”は、二回の世界戦争を経て、19世紀から20世紀初頭に全盛を誇った英国の社会が、徐々に変化していく有様が詳しく表されています。次の文章はミスマープルが変わりゆく英国社会に感慨深く思う場面です。 セントメアリー…

アガサ作品と関連図書

”イラストで読む旧約聖書の物語と絵画” 杉全美帆子氏著 河出書房新社発行 外国語(特に英語)を学習するとき次のことに重点を置くことが大事といわれます。 まず、シェークスピア、マザーグースそしてなにより聖書です。 様々なエピソードや格言が現在でも…

アガサ作品と関連図書

アガサクリスティー作品を使ってセミナーを開いていますが、その際作品にまつわるエピソードを調べるときには、先人の残されたあらゆる資料を必要とします。その際、手身近で便利なものはやはり書籍です。 今回は作品「葬儀を終えて・1953年発表」の回に使用…

シャーロック・ホームズ

鏡は横にひび割れて、より(P53 第3章 No.2) 「まあ、なんという言い方ですの?」「そうではありませんか?それはともかくとして、あなたはパセリが夏の暑い日にバターの中に沈み込む深さからでも、推理できる人だ。私は前から感じていましたよ。シャーロ…

セント・メアリー・ミード村

セント・メアリー・ミード村は架空の村で、マープルの話によると、典型的なイギリスのかわいらしい村と言った所のようです。それでも商店や教会、銀行、郵便局が揃い つつましく生活する分では、申し分ないようです。 しかし、二つの戦争を経てこの穏やかな…

神戸のお茶について

アガサキリスティーの作品を調べていると、思わぬ歴史や事柄を発見します。作品「杉の柩・1940年発表」では、お茶がキーポイントになります。茶の歴史を探る過程で、19世紀の後半にはわが町神戸にも、茶園が存在していたことが分かりました。 次の表は明治5…

< アガサクリスティー作品の傾向 >

1890年生まれのアガサクリスティーにとって、19世紀に絶頂を迎えた祖国イギリスは、どのように映っていたのでしょう? ボーア戦争、第一次世界大戦、そして第二次世界大戦と、1976年にその生涯を終えるまで三回の戦争を目のあたりにして、彼女の作品にはどの…

テキスト公開 4月14日 セミナー ナイルに死す その⑧

複雑な思いを胸に含んだ三人の男女は、ナイル川を上るカルナック号に乗船します。 遊覧航行ながら、不穏な空気が流れる船内では、各自に与えられた部屋に全員落ち着きます。 歴史的エジプト遺産が残るアブシンベル付近で、とうとう事件が展望室で起きてしま…

< アガサクリスティー作品の傾向 >

第一次大戦後、ベルギーからの避難民の設定として名探偵エルキュール・ポアロは生まれました。彼はアガサ作品のほぼ6割を占めます。 1940年代がポアロの最盛期とすると、それ以降の主役はミス・マープルです。 イギリスの典型的な田舎町、”セントメアリーミ…

テキスト公開 4月14日 セミナー ナイルに死す その⑦

今回は殺人事件の現場となったナイル川の概略をお伝えします。 イラストの下の方(上流)から上の方(下流)へと、大河が流れるのですが、ポアロ たちは下流から上流へと河を登るツアーに出かけます。この船上で事件が起きます。 アスワン・カタラクトホテル…

テキスト公開 4月14日 セミナー ナイルに死す その⑥

作品”ナイルに死す”は、イギリスの郊外にあるカントリーハウス(主に富豪が住む豪邸)から始まります。 金持ちのリネットは友人ジャクリーヌから恋人のサイモンに職を与えて欲しいと、懇願します。やがて、リネットは親友の恋人と結婚しエジプトへ新婚旅行へ…

< アガサクリスティー作品の傾向 >

彼女の作品”スタイルズ荘の殺人”が、世に出たのは1920年、持ち込んだ出版社になかなか認められず、あのアガサも新人作家として苦労された模様です。 次のグラフは年代ごとのアガサが発表した作品の数です。 この年より二年前、1918年に第一次世界大戦は終了…

テキスト公開 4月14日 セミナー ナイルに死す その⑤

近世において、オスマントルコはエジプトの宗主国でしたが、イギリスは東洋の植民地へ通じる運河を領土に持つエジプトへ近づきます。 1882年エジプト国内に起こった内乱(ウラービー革命)を収めるためイギリスは軍事介入します。同年9月13日、革命を鎮圧し…

こぼれ(た)話 アガサクリスティー自伝より。

私たちはコメディーフランセーズに連れていかれ、・・・中略・・・ 私はサラ・ベルナールを観た。(アガサ・クリスティー自伝 上巻 ) アガサ・クリスティーのことを調べるため、自伝を読んでいるとフランスでサラ・ベルナールの講演を観たという記述に目が止まり…

これからのセミナー予定

私のアガサ・セミナーは準備に3~4ケ月ほど必要としますので、年間2~3回が限度です。けれど、通算11回を経験した現在いわゆる持ちネタが7個(7作品)になりましたので、全く新規の方からお声が掛っても、以前よりわずかな準備で対応できるようになってきまし…

テキスト公開 4月14日 セミナー ナイルに死す その④

18世紀前後からの産業革命は、物資(生産物・原材料)の輸送手段として、運河の重要性をイギリスに気づかせる”きっかけ”になりました。 動物(馬)を使った輸送から、後の蒸気機関車を使う輸送が中心となるのですが、一方大量の生産物を国外へ輸送できる船舶…

テキスト公開 4月14日 セミナー ナイルに死す その③

作品”ナイルに死す”の舞台は、ダイナミックでイギリス(おそらく郊外)カイロ・アスワン・ワディ・ハルファと多岐にわたります。まるで観光旅行に同行するような気分で作品を味わます。 大河ナイルを登る船旅で何が起こったのでしょう? 次回のテキスト紹介…