作品”鏡は横にひび割れて”では、殺人の動機がマープルを悩ませます。しかし、被害者が良かれと思って行った行動が、犯人に一生の悔やみと苦しみを与えてしまった事実にマープルはたどり着きます。
19世紀後半から20世紀にかけて、ヨーロッパやオーストラリアに蔓延した風疹が、この作品の大きなカギとなります。第一次世界大戦の間、看護師として働いた経験のあるアガサ女史にとってもこの伝染病は極めて身近な存在であったろうと推測されます。
風疹のことを知るのにこの大作”ワクチンレース・THE VACCIN RACE”のお世話になりました。ちなみにもう一冊、”正しく怖がる伝染病・岡田晴恵著、ちくまフリー新書”では、風疹の項目にズバリ! アガサのこの作品にふれておられます。これも私にとっては嬉しい、一冊となりました。