1890年生まれのアガサクリスティーにとって、19世紀に絶頂を迎えた祖国イギリスは、どのように映っていたのでしょう?
ボーア戦争、第一次世界大戦、そして第二次世界大戦と、1976年にその生涯を終えるまで三回の戦争を目のあたりにして、彼女の作品にはどのような影響があったのでしょう?
1920年から1940年までの20年間はポアロの絶頂期のように私には思えます。
第二次世界大戦が終わり、ドイツに蹂躙されたイギリスがかっての帝国としての地位を失うに比例して、アガサの生み出す作品の比重はポアロからミス・マープルに移行しているようです。
それは、オリエント急行で中東からヨーロッパ、さらには観光船でナイルまでポアロを登場させた時代から、古き良き英国の田舎で、ミスマープロを活躍させたように、アガサ女史も内に向かう作品傾向に、変化したように感じます。