第一回目のセミナー風景

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 早いもので、2019年の3月に始めた”教えてアガサセミナー”も、丸3年を迎えました。拙い内容に我慢してお付き合いしていただいている、皆様のおかげです。

 次回のセミナーの準備中に、第一回目の写真が出てきました。お世話をしていただいたNPO法人の事務員の方に撮っていただいた一枚です。

最初の会とあって、落ち着きのない表情が見て取れます。何を喋っていたのかなあ?

写真を撮っていただいたことも、とうに忘れていました。

 第15回目はこの初回と同じく、”オリエント急行の殺人”を、再度取り上げます。

3年を経て、内容が充実していればいいのですが、やはり不安です。

次回 教えてアガサセミナー、予告です。

 回も知らぬ間に重ねて、次回は第15回となります。

 ちょうど3年前にスタートしたこの読書会ですが、今から思えば初回”オリエント急行の殺人”の回の内容はそれはそれは稚拙極まりないものでした。

 この3年間で私なりに要領が少しわかってきましたので、改良版として、もう一度”オリエント急行の殺人”を、取り上げます。

 最近になって、この会にご参加される方は、私の読書会でアガサクリスティーの一番有名なこの作品をどう扱ったかは、ご存じありません。ちょうどいい機会ですので、再度お話させていただこうと、思います。

 

 

 2019年3月 第一回目の風景 壁に大きな紙を貼ってホワイトボード代わりに使用していました。

 

英国の食生活 その4

ニシンは処理によって名前が付いたものがあります。その名が「レッドヘリング」と言い、14世紀のブリテン島東部、グレート・ヤーマス(英: Great Yarmouth)で生産され始めたという史実が残っているようです。

 

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ニシンはよく洗って後、半月ほど塩に漬けられ燻製にされ、貴重な食糧と輸出商品となったわけです。

 

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アガサクリスティーの名作、“そして誰もいなくなった”では次のように使われています。

4人のインディアンが海に出かけた。1人が燻製のニシンに飲まれて3人になった。

Four little soldier boys going out to sea, A red herring swallowed one and then there were three.』No.6 p35~36

 

作中、7番目の犠牲者がこのマザーグースの歌詞になぞらえて殺されます。

 

レッドヘリング(赤いにしん)が、英語圏の諺として使われる場合は、匂いのきつい燻製ですから、真実から目をそらす・ごまかす、という意味で使われます。この言葉が犯人を特定する上でのヒントの一つとなっていました。

 

今回の参考資料 『魚で始まる世界史』越智敏之氏・著 平凡社新書

お世話になりました。

 

英国の食生活 その3

 フィッシュアンドチップスに使われた魚である、ニシンとタラについて調べてみました。今回はまず”ニシン”の歴史から。

 

 中世から近世のヨーロッパでは、海洋での争いごとが絶えず、しばしば戦争の原因にもなりました。特にオランダと英国の間では、ニシンの漁獲をめぐって数々の争いが見られます。

 

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 17世紀のオランダはカトリックのスペインから独立を勝ち取り、国家としての全盛期を迎えます。経済的な繁栄は、北海に群れになって現れるニシンによって得られました。
大量に収穫されたニシンは塩漬けにされ、専用の樽に漬け込まれました。

 

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 この「ニシンの塩漬け」は、強力な輸出商品としてオランダに寄与したそうです。
ニシンの捕獲に使われた漁船は「バス船」と呼ばれ、ニシンの海上(船上)での加工を可能にしました。

 

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 レンブラントと並ぶ17世紀、オランダの画家であるフェルメールの作品“デルフト眺望”に描かれた(右端)船は、当時のバス船を確認できる貴重な一枚でもあるそうです。

 

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今回の参考資料
魚で始まる世界史 越智敏之 平凡社新書
フェルメールと西洋美術の巨匠たち 八坂書房

英国の食生活 その2

 前回、イギリスを代表する国民食、”フィッシュアンドチップス”について書かせていただきました。冷凍技術や鉄道輸送網の発達、そしてトロール漁業の進化によって、魚の供給と揚げたジャガイモの取り合わせが、イギリスの庶民の間で浸透し始めます。それは19世紀、正確には1860年ごろだと言われています。材料に使われた魚は主に「タラ・ヒラメ・カレイ」だったそうです。

 

 主な長編だけでも60作を超えるアガサクリスティーの作品の中でも、「フィッシュアンドチップス」が登場するのは、それほど多くはありません。1929年に発表された”7つの時計”は、ロンドン郊外の大邸宅”チムニー館”で、外交官ケリーが変死します。この事件に〈セブンダイヤルズ〉という謎の言葉がかかわってきます。アガサ作品にしては珍しい、冒険ミステリーです。

 

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また、30分ほどダンスをして、フィッシュアンドチップスを食べてしまうと、彼はもう引き上げようと切り出した。

フィッシュフライとポテト、相対的にむさくるしい感じ、まさにイーストエンドの縮図ってとこだけど・・・。

7つの時計 深町眞理子訳 ハヤカワ文庫

 

 ロンドン東部(イーストエンド)、ロンドン塔の周辺はいわゆる低所得者が住むエリアでした。歴史的な猟奇事件切り裂きジャックが暗躍した地域でもあり、単純労働者の集積が見られ、”安くて食べ応えのある”フィッシュアンドチップスは、大いに歓迎されたことでしょう。

 

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 赤枠内がロンドン中心地のエストエンド、東のロンドン塔の周りがいわゆるイーストエンド地区です。行政上の地名ではなさそうです。

 

 この料理には、モルトビネガーが良く合ったようで、ある調査によると利用者の半数がビネガーを選び、15%がトマトケチャップをつけて食したようです。

 

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英国の食生活

 

🥔🐟 エディーズ・フィッシャーショップ 


ノーマン・スタンフィールド・コーニッシュ ( 1919 –  2014) 英国生まれの画家

 

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 次の”教えてアガサ・セミナー”に向けて、下調べ中に出会った資料でこの絵を見つけました。

 

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 絵は上の風景を描いたそうです。19世紀、ロンドン・イーストエンド地区には、たくさんのファストフード店(今で言う)が営業していましたが、一番多かったのは、かの有名な“フィッシュアンドチップス”を売るお店でした。

 

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 揚げた魚とジャガイモの出会いは、当時のイギリスの産業の変化が多いに寄与していました。蒸気機関車の発展はブリテン島の沿岸から国内への新鮮な魚の供給を可能にし、漁船の大型化と網の進歩が漁獲高の増加をもたらしました。

 

 この二つの食材が国内の労働者の空腹を満たしたことで、下町にたくさんのフィッシュアンドチップス店が生まれたそうです。この絵に見られる風景も買い物客で賑わう下町が描かれています。(まさに絵で描いたような雨で覆われた、イギリスらしいほの暗い空です。)

 

注釈 作者ノーマン・スタンフィールド・コーニッシュは鉱山画家と紹介されていますが、鉱山労働者を主に題材にしたようです。ウィキペディアより引用。

 

次回の教えてアガサセミナー、予告。

 二か月前、二回のセミナーを終えての虚脱状態からようやく復帰しました。
次回、通算第15回目は5月28日㈯、神戸市灘区の“あすパーク”で行います。
 他の会場でも行っていますが、ここはホーム会場のようになっています。

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 取り上げる作品は、『オリエント急行の殺人』、初心に帰ります。同じ作品としては、都合4回目となります。けれど、語りつくせないほどの作品ですので、新しい視点を加えて前回よりも充実したセミナーにしようと、苦心惨憺のこの頃です。

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 加えて、アガサを産んだイギリスの食生活に焦点を当て、国民食フィッシュアンドチップス”も語ろうと、画策しています。また、苦悶の準備期間が始まります。

 

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