英国の食生活 その2

 前回、イギリスを代表する国民食、”フィッシュアンドチップス”について書かせていただきました。冷凍技術や鉄道輸送網の発達、そしてトロール漁業の進化によって、魚の供給と揚げたジャガイモの取り合わせが、イギリスの庶民の間で浸透し始めます。それは19世紀、正確には1860年ごろだと言われています。材料に使われた魚は主に「タラ・ヒラメ・カレイ」だったそうです。

 

 主な長編だけでも60作を超えるアガサクリスティーの作品の中でも、「フィッシュアンドチップス」が登場するのは、それほど多くはありません。1929年に発表された”7つの時計”は、ロンドン郊外の大邸宅”チムニー館”で、外交官ケリーが変死します。この事件に〈セブンダイヤルズ〉という謎の言葉がかかわってきます。アガサ作品にしては珍しい、冒険ミステリーです。

 

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また、30分ほどダンスをして、フィッシュアンドチップスを食べてしまうと、彼はもう引き上げようと切り出した。

フィッシュフライとポテト、相対的にむさくるしい感じ、まさにイーストエンドの縮図ってとこだけど・・・。

7つの時計 深町眞理子訳 ハヤカワ文庫

 

 ロンドン東部(イーストエンド)、ロンドン塔の周辺はいわゆる低所得者が住むエリアでした。歴史的な猟奇事件切り裂きジャックが暗躍した地域でもあり、単純労働者の集積が見られ、”安くて食べ応えのある”フィッシュアンドチップスは、大いに歓迎されたことでしょう。

 

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 赤枠内がロンドン中心地のエストエンド、東のロンドン塔の周りがいわゆるイーストエンド地区です。行政上の地名ではなさそうです。

 

 この料理には、モルトビネガーが良く合ったようで、ある調査によると利用者の半数がビネガーを選び、15%がトマトケチャップをつけて食したようです。

 

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