教えてアガサセミナー第15回目と、次回の報告。

 

先週28日㈯、神戸市灘区のあすパークで、無事第15回”教えてアガサセミナー”は、無事終了いたしました。定員(10名)ぎりぎりの9名の方にお集まりいただき、オリエント急行の殺人を取り上げ、我ながら熱のこもった90分でした。
 今回は、写真・動画を取ることもすっかり忘れるほどの、盛り上がりようでした。

 

 

 次回はリクエストに応え、今年の10月あたり作品は『バートラムホテルにて』、ミスマープルシリーズ10冊目に当たります。
オリエント急行に比べて、少し地味な一作ですが、イギリスヴィクトリア朝の雰囲気を漂わせる作品です。
 さあ、また頭を悩ませる数カ月が始まります。

次回、5月28日のテキスト No.2

 いよいよ次回のセミナーが今週に迫ってきました。今できること、しなければいけないことは自分で作ったテキストの確認です。

 

というわけで、今回の最終テキストは「フィッシュアンドチップスの登場する作品」です。

 

 

次回、5月28日のテキスト No.1

 次回の”教えてアガサセミナー”に取り上げる作品は、名作「オリエント急行の殺人」です。過去、何回か会場を変えてお話をさせていただいた作品ですが、同じことを喋ってもしょうがないので、色々とポイントを変える趣向です。

 今回は何回か予告させていただいたように、”フィッシュアンドチップス”が、新しい題材です。

 

 とは言うものの、書き散らかしたかのような、投稿を一枚のテキストに仕立て上げるのは、なかなか大変です。(今に始まったことではありませんが。)

 出来上がった二枚のテキストのうち、今回は「フィッシュアンドチップスの誕生」と、銘打った一枚です。

 

 

フィッシュアンドチップスが登場する作品。

『七つの時計』
「昔はトテナムコート界隈の、まあ貧民街に近い土地柄だったけどね。今じゃすっかり取り壊されたり、撤去されたりしている。フィッシュフライとポテト。相対的にむさくるしい感じ。まさにイーストエンドの縮図ってところだけど、芝居がはねたあとで寄るには、すごく便利なんだ。」

 

 あるようでなかなか見つからないのが、フィッシュアンドチップスが作中に出てくる作品です。私が知らないだけかもしれませんが、今のところ『七つの時計』しか見つけられませんでした。

 この作品は1929年発表のアガサ女史39才、前夫アーチボルト・クリスティーとの離婚後、翌年の作品です。バトル刑事シリーズの第2作目となります。

 

 

 

 

 フィッシュアンドチップスが、そもそものロンドン労働者階級の食べ物であった故か、美食家のポアロには向かない食品のように思えます。アガサ女史本人もいつも食していたように思えません。(私の主観です。)

 

 材料に使われたのは、もともと中米からヨーロッパに持ち込まれたジャガイモと、主に北海で獲られた白身の魚(タラ・ニシンなど)でした。

 

 

 

 まだ漁船の性能が低かったころ、鮮魚は多くのロンドン市民にはなじみのない食品だったようで、後に蒸気船とトロール漁法、さらには蒸気機関車が導入されるにつれて多くの市民にも食されるようになったようです。

 とはいうものの、階級社会のイギリスのこと、もっぱら筋肉労働にたずさわる、労働者階級に愛されたようです。それゆえ、魚の荷揚げに従事する港湾労働者が住まう、ロンドン・イーストエンドはスラム化しました。連続殺人鬼として名高い”切り裂きジャック”の暗躍したのも、このイーストエンドでした。

(上の地図、ロンドンという文字の右側が通称イーストエンドと呼ばれる地域です。)

神戸生涯学習市民講師の更新

 先日、2022年度の講師登録者名簿と登録書が送られてきました。

 


 早いもので、神戸市の生涯学習市民講師になって、4年目を迎えました。


3年目までは、講習の申し込みは皆無でしたが、知らない間に「教えてアガサセミ

ー」と銘打った怪しげな講座も、ポツポツと依頼が舞い込むようになりました。ホント

に有難いことです。今年度も頑張ろう。

 

 

 

 

教えて・アガサセミナー項目 は行

ポアロはそこで電報を読み上げた。
『タシカニフェルメール。ガスリー』
突然、ミス・ギルクリフトが、何かに弾かれたようにしゃべりだした。

ページ463

He held up the telegram and read.
“Definitely a Vermeer, Guthrie”
Suddenly, with electrifying effect,
Miss Gilchrist burst into speech  page 296

葬儀を終えて After the funeral より

 

作品 ”葬儀を終えて”は、1953年発表のポアロシリーズ第25作です。

事件は17世紀オランダの画家、フェルメールの作品が犯行の動機となりました。

今回は当時のフランドル地方に誕生した、画家と作品の背景についてです。

 

真珠の耳飾りの少女 オランダの画家 ヨハネス・フェルメール1665年あたり

フェルメールと言えば、やはりこの作品でしょうが、

 

    色々と調べてみると、不思議な絵画です。17世紀オランダに女性がターバンを巻く風習は無かったそうで、それはインドあたりの文化だったそうです。


 謎の答えは、当時オランダがおかれた歴史・環境にありました。長らくスペイン(ハプスブルグ家)に抑圧されたネーデルランド地方(現在のベルギー・オランダ)は、カトリックからの独立をかけ戦争をします。独立を勝ち取ったオランダと成しえなかったベルギーは、各々の道を歩みました。

 


 喜望峰を抜け航路を開拓したオランダは、西アジアから、やがてはるばる日本までやってきました。その途中、中東(現在のアフガニスタン)で得た、『青い鉱物・ラピズラズリ』が、インドの風習である少女のターバンを彩ることになりました。

 

 



 ちなみにスペインとの独立に活躍した火縄銃連盟が、レンブラントに依頼した絵画が名作『夜警』でした。


📚今回の参考書籍
名画で学ぶ経済の世界史 田中靖浩 マガジンハウス
これだけは知っておきたい岩石・鉱物図鑑 パイインターナショナル

 



 

教えてアガサ・セミナー項目 た行

彼は言えり。
「愛らしい顔のお方だ。神よ、みめぐみをたれたまえ、シャロットの姫に」

鏡は横にひび割れて 早川書房・445頁

“He said: “She has a lovely face; God in his mercy lend her grace, The lady of Shalott” 

THE MIRROR CRCKE'D FROM SIDE TO SIDE 351頁

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 アガサクリスティーの作品には、イギリス人らしくシェークスピアマザーグース

良く引用されます。時には私たち(私だけ?)には、なかなかンなじみのない作家や画

家も引用されその都度、新しい知識を得ることができます。

 上記の引用文は名作”鏡は横にひび割れて”の最後に、ミスマープルが口ずさんだ一文です。

 この詩はイギリスの詩人、アルフレッド・テニスン(1809~1892)がレディー・オブ・シャロットからです。

 

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そして上の絵画は、『シャロットの女』(シャロットのおんな、The Lady of Shalott)

イギリスの画家ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスによる1888年の絵画です。