アガサ作品に登場する地名 ア行 ヴィンコヴィチ

アガサはイギリス人ですから、舞台はやはり西ヨーロッパが中心となります。

 けれど、オリエント急行の殺人(1934年発表)では、物語のほとんどは大雪の降り積もる旧ユーゴスラビア、周りは何も見当たらない東ヨーロッパの、ヴィンコヴィチとブロッドの間で進みます。ヴィンコヴィチは現在クロアチアの東部に位置する町です。ブロッドという名の地名はどうも見つかりませんが、ユーゴスラビア内であることは、前後の文章から判断できます。

車掌
「そうですよ、ムシュー。お気づきにならなったんですか? 列車は止まっています。雪溜りに突っ込んでしまいましてね。いつまでここにとじこめられているのか、見込みがつかないんですよ。前にも七日間立ち往生したことがありますからね」

ポアロ
「ここは何処なのだ?」

車掌
「ヴィンコヴィチとブロッドのあいだです。」

本文57ページ

“But yes, Monsieur. Monsieur has not noticed? The train has stopped. We have run into a snowdrift. Heaven knows how long we shall be here. I remember once being snowed up for seven days.”
“Where are we?”
“ Between Vincovi and Brod”

 

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*グーグルアースより

 実際のオリエント急行でも、このエリアでは、深い雪に列車が進行を妨げられることは起こったようで、貴重な写真が残っています。

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 この写真を含めて貴重な資料は、MIKE'S RAILWAY HISTORYというウェブサイトを、参考にしました。現在、このサイトは無くなっているようで残念です。

 

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