名作”オリエント急行の殺人”を生んだ背景 ①


政治情勢とか、インド政府の事、自分たちの国の経済問題、ウオール街の危機などが話題に上りました。僕はイギリス人とはあまり親しくしないようにしているのです。なにしろ頑固ですからね。でも大佐は気にいりましたよ。

(被害者・ラチェットの秘書 マックイーンの言葉)


Discussed world politics and the government of india and our own troubles with the financial situation and the Wall Street crisis. I don’t as a rule cotton to Britishers – they ‘re a stiff-necked – but I liked this one.

本文 第2章 No.2 120ページ

 

 オリエント急行の殺人は1934年に発表されましたが、この5年前ニューヨークウォール街から始まった金融恐慌はのちに世界を席巻しました。この暗い時代、民衆を明るい気分にしてくれたのが、1927年に大西洋を横断しアメリカからパリへ単独飛行を成功させた英雄リンドバーグでした。

しかし、3年後に彼の愛息が誘拐され、悲しい結末に終わった事件は、犯人に対する激しい怒りを誘います。世界恐慌が生んだ世相が、ポアロ唯一の犯人を見逃す(故意に)作品を、生むきっかけになったような気がします。

 


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1929年10月24日 世界恐慌