エドワード王朝 近代イギリス黄金時代

 中に入ると、バートラムホテルにはじめての人だったら、まずびっくりする-もはや消滅した世界へ逆戻りしたのではないかと思う。時が後戻りしている。まるでエドワード王朝時代の英国なのである。 本文8頁

Inside, if this is was the first time you had visited Berrtram’s ,you felt, almost with alarm, that you had re-entered a vanished world. Time had gone back. You were in Edwardian England once more.
原書 page 2

 クリスティーの作品には“エドワード朝時代” (Edwardian era)という言葉が散見されます。
エドワード7世(1841年-1910年)は、ビクトリア女王とご主人アルバート氏との間の息子で、女王が長く王権に属していたので、彼が王位に就いたのは、すでに60歳近くになっていました。

 

 

 

 母親が彼に王位を譲らなかったのは、アルバート公の早世のショックで公務に消極的になって、隠遁状態になったことでした。周囲の不満にもかかわらず、イギリス国家としては、南アフリカボーア戦争)、アジア(アヘン戦争)などを通じての植民地獲得など、パックスブリタニカ(イギリスによる世界秩序)と呼ばれる時代を、迎えました。

 クリスティーはこのころ20代の半ば(1890年生まれ)、大いに繁栄する母国を誇りに思っていたのかもしれません。

 

 

今回の参考資料
イギリス史10講 近藤和彦氏著 岩波新書
王様でたどるイギリス史 池上俊一氏著 岩波ジュニア新書
イギリス王家 12の物語 中野京子氏著 光文社新書