イギリス貴族の生活。①

 クリスティー女史の時代は、英国ヴィクトリア朝の時代でした。20世紀の初頭に起こった戦争(ボーア戦争)によって、さすがの帝国の勢力も陰りを見せ始めます。

 ですが、多くの使用人を抱える貴族の生活はまだまだ健在です。

この作品にもそういった生活ぶりを感じさせてくれる描写があります。

 

 アクロイドともあろう人物が、理容師ふぜいに秘密を打ち明け姪と養子の結婚問題を相談するとは思わなかった。アクロイドは低い身分の者にも情は示しはするが、非常に対面を重んじる人間なのだ。 (本文・42ページ)

 

I could not see Ackroyd taking a hairdresser into his confidence, and discussing the marriage of his niece and stepson with him. Arkroyd extends a genial patronage to the lower orders, but he has a very great sense of his own dignity.

 

”理容師”とは、医師ジェームスの姉キャロラインが、隣人ポアロを理容師と勘違いした結果の言葉です。「理容師ふぜい」「低い身分の者」など、イギリスの階級意識が表れています。

 

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 貴族の館はカンツリーハウスと呼ばれ、広大な敷地を占めていました。よって、それを管理する召使たちの数も多かったわけです。彼らの頂点に立つのが、ハウススチュアート(house steward)・総支配人、そして バトラー(執事・butler)・現場指揮担当たちです。

 


イギリスの風景 貴族の館、美しいTitsey Place 観光の穴場

 

*参考文典 図説英国貴族の暮らし 田中亮三氏 河出書房新社

      図説英国メイドの日常 村上リコ氏 河出書房新社