アームストロング事件について ②

 この作品は1934年に発表されました。時代はその5年前の1929年アメリカ・ウオール街から始まった世界恐慌に世界は翻弄されていました。

  そんな中、一人の英雄が表れます。名をチャールズ・オーガスタス・リンドバーグ( Charles Augustus Lindbergh,)ニューヨークからパリまで愛機・スピリット・オブ・セントルイス号で単独飛行に成功します。暗い世相に明るい灯がともったのでした。

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 さて、この英雄に悲劇が訪れます。愛児(生後20ケ月)が誘拐されたのでした。この事件はクリスティーに大きな影響を与えたと考えられます。オリエント急行の殺人には、こんな文章が書かれています。

原書より

They had one child -a girl- whom they idolized. When she was three years old,she was kidnapped, and an impossibly high sum demanded as the price of her return.after having paid over the enormous sum of two hundred thousand dollars, the child’s dead body was discovered,

 

 三つの時にその子が誘拐され、命と引き換えに途方もない身代金を要求されていた。二十万ドル莫大な替えを払った後、子供の死体が発見された.。

オリエント急行の殺人・早川書房 中村能三氏の訳文を、少し変えさせてもらっています。)

 

 実際の事件(リンドバーグ事件)と作中のそれ(アームストロング事件)を、虚々実々に表していますが、アガサはリンドバーグ事件に憤慨と憤りを感じたのではないでしょうか? 

 私の知っている限り唯一犯人を取り逃がす(許す?)事例ではなかったかと思います。以下は、リンドバーグ事件当時の様子を、記録した動画です。

 


飛行家チャールズ・リンドバーグ 愛児誘拐殺人事件