参考文献 イラストで読む旧約聖書の物語と絵画  

 1939年 発表の名作「そして誰もいなくなった」は、ポアロもマープルも出てこない探偵不在の作品です。孤島に残された人物が一人また一人と無くなっていき、同時にインディアンの人形その都度消えていくという、ミステリーとサスペンスを兼ね備えた傑作です。

 ヨーロッパの文化を理解するうえで重要な要素が三つあると言います。まずは「聖書」そして「マザーグース」最後に「シェークスピア」があげられます。この作品では登場人物の発言に注意を払わないといけないのは、ミステリーの条件です。けれど私たちにとって身近でない文化が理解と推理には障壁となる場合があります。けれどそのことを知ればなお一層、他国の文化や習慣を深く理解できるのもまた事実です。

 

 誰の言葉とはここでは明らかにできませんが、聖書が生活の基盤となっている人たちにとっては、このセリフに敏感に反応されるのでしょうね。私などはこの「カインの刻印」とは、なんぞや? の思いからある本を手に入れました。

 

 

 私なんぞは難しい専門書よりもイラストで説明されるほうが助かります。

「カインの刻印」なるものは、旧約聖書天地創造からのエピソードにありました。

 

 アダムとイブの間に生まれた兄弟、カインとアベルは神にささげものをします。ところが、弟アベルの捧げもの・子羊を神は受け取りますが、兄カインの農作物は受け取りませんでした。

 

 嫉妬に駆られたカインは弟アベルを殺してしまいます。これが人類最初の殺人と言われています。(キリスト教の世界では。)これを知った髪は怒りのあまりカインを追放します。カインは狼狽し「ほかの地に行けば私は殺されてしまう!」と懇願します。さて、神はどう言ったでしょう? 

『お前を手にかけることが出来るのは神だけだ。そのしるしをお前の眉間に記しておく。』これが〈カインの刻印〉と言うわけです。

 

つまりは孤島にいる人物でこのしるしがあるのは、他人が殺すことは出来ないという暗喩というわけです。だから犯人は・・・・。

これだけのことを、アガサクリスティーは、『言うまでもなくThere is,

of course,little more to say』などと、言ってくれるわけですね。深いです。

 

参考文典 イラストで読む旧約聖書の物語と絵画 杉全美帆子氏著 河出書房