人間は現実に直面しなければならないのだ。(鏡は横にひび割れて・より)
P10 第1章 No.1
人間は現実に直面しなければならないのだ。セントメアリーミードだって昔どうりではない。そう言えばある意味では、何もかもが依然と違ってきている。本当は自分が年をとってきたという、単純な事実のせいなのだ。
One had to face the fact : St Mary Mead was not the place it had been.
In a sense, of course, nothing was what it had been. – but what one really meant was simple fact that one was growing up.
年齢を重ねるということは、自分に培ってきた知識や経験がいつの間にか、時代にそぐわないと認めることかもしれません。
この作品(鏡は横にひび割れて)は、1962年に発表されました。アガサ女史が72才の時です。大英帝国が第二次世界大戦後、かっての貴族社会が近代社会にそぎわなくなり、新しい世代(アメリカのような)に取って代わられようとしていた時代です。
アカデミー賞作家、カズオ・イシグロ氏の作品、“日の名残り”にも、裕福なアメリカ人に売却されるイギリスの豪邸を舞台にしています。