イギリス貴族の上下関係は厳しく、当主は使用人の名前や素性などには関心を持たず、細々としたことは全て、執事や秘書の仕事でした。
昨日の夜、ここに入ってきた使用人は誰ですか?
部屋係のメイドがベッドカバーをめくりに来たと思いますけど。
何というメイドですか? 氏素性についてご存じですか?
彼女は人のいいありふれた田舎娘ですわ。
(本文・191ページ 話手 警部と当主のセシルアクロイド夫人)
Which of the servants would come in here yesterday evening? I suppose the housemaid would turn down the bed. Who is she? What do you know about her? She’s nice ordinary country girl.
さて、貴族の館で実際に膨大な雑用をこなすのは、ハウスメイドと呼ばれる若い女性たちでした。19世紀末から20世紀初頭のイギリスの村では、貴族の館に仕えることは、まったく珍しいことではなく、賃金だけでなく礼儀作法を身に着けるチャンスでもありました。
貴族の余暇の為とは言え、現在の感覚からすれば少々贅沢な、”専属の役割”を、与えられた使用人もいました。キツネ狩りのためのキツネ管理人(キツネを育てておく係)などが、代表的です。
現在上映中の映画”ダウントン アビー”は、1927年の英国、ジョージ5世とメアリー王妃が、ダウントン・アビーを訪問します。イギリス貴族の暮らしぶりが描かれた一作です。