コロナ濃厚接触者になってしまいました。

 先週中ごろから奥さんがのどの痛みと咳、微熱を訴えるようになり、近くの医療機関で検査を受けました。案の定、陽性と分かり自宅待機の毎日です。

私は、濃厚接触ということで、5日間の外出禁止。ひたすら忍の毎日です。

 えらいもので、高齢者の方が入院されると筋肉が衰え実生活に影響がでると言いますが、外に出ない禁欲生活は知識欲をそぎます。確実に。まず、硬い本が読めません。何回も読んで内容も熟知しているものしか、手に取る気がしません。えらいものです。

 なにはともあれ、夫婦とも3回のワクチンを接種していますので、これぐらいで済んでいると、何事も前向きな我々です。あと少し、そろそろ通常社会に復帰できるよう、近所の散歩辺りから、世間の風を体験してみます。皆さんもお気を付けを。

 

教えてアガサ・セミナー項目 あ行

🍺 アルコール

産業革命を経たイギリスで深刻な問題は、アルコール中毒でした。

当時の世相を描いた(少々誇張はあると思いますが)ウィリアム・ホガース(イギリスの画家 1697年- 1764年)の『ジン横丁・1751年』には、町中にあふれるアルコールに耽る人々が描かれています。

 

 

勝手な妄想ですが、アルコールに対する度を過ぎた許容が、この国には受け継がれているのでしょうか?『書斎の死体・1942年 ミスマープル第2作目』には、次の様なセリフが見受けられます。

 

P263 第16章 No.2

酔ってたんですか? 大佐の声には酔っ払いに対するイギリス人特有の同情がこもっていた。「酔っていた時にしでかしたことで、その人間性を判断することはできませんなあ。」

 

“Bottled? Was he? Said Coloud, with an Englishman’s sympathy for alcohokic excess, “

Oh, we can’t judge a fellow by what he does when he’s drunken.

 

文頭の酔ってたんですか?の原文が、“Bottled?と書かれているのが

瓶の中に浸っていたような表現で恐ろしいかぎりですね。

 



こういった言い回しにお国柄がほんの少し現れるようで、興味深いですね。

 

原書が届きました!

 次回のセミナーに使用する「バートラムホテルにて」の原書、「AT BERTRAM'S HOTEL」が、届きました。輸入版ですから、ひと月ほどかかると思っていました。こんなに早く手に入って感激です。

 

 

 

 

次回、『バートラムホテルにて』

 次回の教えてアガサセミナーのテキストは『バートラムホテルにて』を取り上げます。

そのための原書をAmazonで注文しました。出版業界にとっては、書店で購入すべきで

しょうが、洋書の場合はそれが出来かねます。本好き・書店好きには、辛い判断です。

 

 

ポアロの一言 『その真っ赤なキモノを・・・』

  



私のスーツケースの中にその真っ赤なキモノをそっと入れた方がありましたが、・・・
It was, I think, someone who placed the scarlet Kimono on top of my suitcase.
(オリエント急行の殺人・NURDER ON THE ORIENT EXPREEEより)
  
 ヨーロッパを舞台にした物語に“キモノ”という言葉が、柾目の柱に節穴が突如現れたかのような印象を与えます。原文にもはっきりKimonoと書かれており、不自然さが目立ちます。

 19世紀の印象派に影響を与えたという“ジャポニズム”は、イギリスが清に仕掛けたアヘン戦争により、隣国の日本への好奇心まで生み出したから、という説があるそうです。大きな出来事が当事国周辺への知識欲を駆り立てるのは、春以降ウクライナ(+周辺)に関する報道が増えたことでも、アガサの作品にKimonoが現れたことを、説明できそうです。

 

以下は余談です・・・。

 

 この絵は、オランダの”画家フェルメール”による 地理学者 1669年 です。

ファルメールの作品、地理学者が身に着けているのは、日本の着物をベースにした衣服だそうです。


 17世紀、海洋交易国家として最盛期をむかえたオランダは、遠く大海を東へ進み日本までやってきます。先行したポルトガルとスペインが布教を目的としたのに比べ、ポルトガルは交易(商売)優先でした。

 長崎に出島を造ってもらったオランダが、日本の風俗に関心を持ったであろうことは、それほど不思議ではありません。アガサの作品からつい、この絵を思い出しました。話が長くなりすみません。

 

次回〈バートラムホテルにて〉の準備。

 前回のセミナーから早くも一カ月、来場いただいた方々へのお礼状と質問にお答えし終えて、ようやく次回のセミナーの準備にかかります。

 いつもながらのスロースターターですので、我ながら苦労します。 次回(今秋ぐらい?)は、ミスマープルの10作目、”バートラムホテルにて”を取り上げます。1965年の作品です。

 

 ミスマープルが、古き良きイギリスのホテルを舞台にした作品です。

参考資料を集め始めましたが、まずイギリス(ロンドン)のホテルとはどんなものかから、始めないといけません。さっそく、近隣の図書館から借りた本がずばり、『ロンドンのホテル』という1冊、(日経BP出版センター)です。

 

 

 沢山のホテルの写真と説明が載っています。作品の舞台となったバートラムホテルのイメージに合いそうなホテルと言えば、『ザ・コノート』というホテルが今のところ、イメージに合いそうです。

 

 

 資料集めが始まったばかり、さあこれから、本文と首っ引きで様々な書籍と動画を集めることになります。この段階が、一番私にとっても楽しい時間です。

 

マープルのひとり言 

 彼女(ミス・マープル)の人生の多くは、やむを得ないことだけど、過去の楽しかったことを思い起こすことで費やされている。その思い出を覚えているにでも出会うことが出来れば、それこそ本当に幸せである。それも今では、容易なことではない。彼女は同時代の人たちよりも長生きしているのだから。

(バートラムホテルにて・アガサクリスティー作)

 

 アガサ女史の小説を読んでいると、ふっと本を置き考えに耽ってしまう文章に出会います。この一文もそのひとつです。

 先日、大学と高校の懐かしい友人たちと昔話に興じたのですが、同年代の友人の中には病魔に侵され一足先に他界したものもいます。

 幸せな時間を過ごせるなら、誰しも長生きをしたいでしょう。「人より長生き」したミスマープルにとって、長生きは幸せだったのでしょうか? この作品は1965年の発表です。アガサ自身は75才(彼女は1890年生まれ)になっています。

 以前は、マープルのモデルはアガサのお祖母さんと言われてきましたが、この作品当時は彼女自身が投影されたかのように思えます。