アガサ作品に登場したスターたち エリザベス・テイラー 

次回のセミナーに登場するアガサ作品は”鏡は横にひび割れて”ですが、映画化された作品のなかでは、いろいろな(?)事情で、題名が変更になっているものもあります。

 

1980年に製作された”クリスタル殺人事件”もその一つです。原題はMirror cracked.

 

f:id:Agathateachs:20210816122712j:plain

 

作品においてアメリカ出身の映画女優を演じるのが”エリザベス・テイラー”、まさに大女優です。役の名前は、マリーナ・グレッグ。

かっては”クレオパトラ”(1963年)に主演しました。(他にも多数出演されていますが、よく知りませんので申し訳ありません。)

 

f:id:Agathateachs:20210816123132j:plain

1932年2月27日~2011年3月23日 イギリス ロンドン生まれとなっていますので、48歳時の作品ですね。悲しい家族の思い出を胸に秘めた役柄です。その悲しさの源に偶然遭遇したところから、もう一つの悲劇が生まれてしまいました。

第12回 教えてアガサ・セミナー

f:id:Agathateachs:20210809153241j:plain

 

次回”教えてアガサセミナー”の、日取りが決まりました。(場所は未定です。)

 

第11回まで、おなじみの探偵エルキュールポアロが活躍する作品をテキストに使用していましたが、今回はミス・マープルを取り上げます。作品は”鏡は横にひび割れて”です。夏の暑さに負けずテキスト作りに励みます。

 

f:id:Agathateachs:20210809153532j:plain

 

参考資料 

f:id:Agathateachs:20210806165944j:plain

 

 作品”鏡は横にひび割れて”では、殺人の動機がマープルを悩ませます。しかし、被害者が良かれと思って行った行動が、犯人に一生の悔やみと苦しみを与えてしまった事実にマープルはたどり着きます。

 19世紀後半から20世紀にかけて、ヨーロッパやオーストラリアに蔓延した風疹が、この作品の大きなカギとなります。第一次世界大戦の間、看護師として働いた経験のあるアガサ女史にとってもこの伝染病は極めて身近な存在であったろうと推測されます。

 

 風疹のことを知るのにこの大作”ワクチンレース・THE VACCIN RACE”のお世話になりました。ちなみにもう一冊、”正しく怖がる伝染病・岡田晴恵著、ちくまフリー新書”では、風疹の項目にズバリ! アガサのこの作品にふれておられます。これも私にとっては嬉しい、一冊となりました。

 

f:id:Agathateachs:20210806170630j:plain

 

ジョージ王朝

f:id:Agathateachs:20210729133553j:plain

 

作品 ”鏡は横にひび割れて・1962年発表”は、二回の世界戦争を経て、19世紀から20世紀初頭に全盛を誇った英国の社会が、徐々に変化していく有様が詳しく表されています。次の文章はミスマープルが変わりゆく英国社会に感慨深く思う場面です。

 

セントメアリーミードもその中心の一画だけはまだ以前の面影を残していた。アン女王朝様式やジョージ王朝様式の建て方のこじんまりとした家々もそのままだった。

(本文10頁)

So Mary Mead, the old world core of it, was still there. The Blue Bore was there,and the church and the vicarage and the little nest of Queen Anne nad Gerorgian house, of which hers wa one.

 

f:id:Agathateachs:20210729134801j:plain

ハノーヴァー王家のジョージ4世(在位1820~1830)は記録によると、常識外の遊び人で放蕩の極みを尽くした人物だそうです。しかし、そんな国王に率いられたにもかかわらず大栄帝国は発展を続けるのでした。

この作品で重要なキャラクター・アメリカの俳優マリーナ・グレッグ役を、エリザベステーラーが演じた作品が残っています。題名は”クリスタル殺人事件・1980年公開” マープル役はアンジェラ・ランズベリー(1925年~)が好演しています。

 


www.youtube.com

 

 

 

アガサ作品と関連図書

📚 ”イラストで読む旧約聖書の物語と絵画” 杉全美帆子氏著 河出書房新社発行

 

 

f:id:Agathateachs:20210723142113p:plain

 

 外国語(特に英語)を学習するとき次のことに重点を置くことが大事といわれます。

まず、シェークスピアマザーグースそしてなにより聖書です。

様々なエピソードや格言が現在でも英語圏の人々の生活に影響を与えています。

 

アガサの名作”そして誰もいなくなった”には、物語の終盤でこんなセリフがあります。

 

f:id:Agathateachs:20210723142658j:plain

 重要なセリフは”カインの刻印”です。これは旧約聖書に書かれた、アダムとイブの間に生まれた兄弟カインとアベルの確執から生まれた言葉です。

英語圏の読者はこの言葉から、ストーリーの骨格をなすトリックに気づく(本当でしょ

うか?)と、作者・アガサは考えているのです。たいていは無神論者である我々には何

のこと?と戸惑ってしまいますが、語源を知れば一層味わい深い読み方も出来ようとい

うものです。

 

f:id:Agathateachs:20210723143249p:plain

 ”イラストで読む旧約聖書の物語と絵画”は、なかなか理解しにくい旧約聖書の内容を

イラストで紹介してくれ、大変役立ちました。ぜひ一読ください。

 

f:id:Agathateachs:20210723143447p:plain

 

 最後から二番目のコマ、No.7で追放されたカインの眉間には刻印が記され、それはカ

インを罰することができるのは神だけである、という含みがあります。つまりこの作品

の犯人は眉間に〇〇がある者というわけです。ぜひ、本作品はじっくりお読みいただき

たいです。

 

アガサ作品と関連図書

アガサクリスティー作品を使ってセミナーを開いていますが、その際作品にまつわるエピソードを調べるときには、先人の残されたあらゆる資料を必要とします。その際、手身近で便利なものはやはり書籍です。

今回は作品「葬儀を終えて・1953年発表」の回に使用した書籍のなかでも、大変役に立った一冊をご紹介します。

名画で学ぶ経済の世界史・田中靖浩著 マガジンハウス』中世から近世に至る北ヨーロッパで起こったルネッサンスにおいて、名画が生まれた歴史が語られます。

 

f:id:Agathateachs:20210717155728j:plain

 

”葬儀を終えて”は、犯人の殺人動機は、被害者の所有する絵画を奪うことでした。

そのために犯人は人間の心理を巧み使うのですが、目的成就までもう一歩のところのところで、ポアロに阻まれてしまいます。犯人の狙いはフェルメールの作品でした。

(デビッド・スーシュがポアロを演じる英国テレビトラマ編では、レンブラントでしたが。)

 

f:id:Agathateachs:20210717160206j:plain

 

さて、中世のヨーロッパで起こったルネッサンスは、おもわぬところまで波及しました。その行先は、フランドル地方、現在のオランダ・ベルギーに相当するエリアでした。17世紀のオランダは海運を中心として国家の最盛期を迎えました。貴族から中産階級へと需要が移った絵画界では、彼らが要望した絵画が人気を博します。その中心画家はルーベンスからレンブラントそしてフェルメールへとバトンを伝えていきました。

 

f:id:Agathateachs:20210717160934j:plain

ルーベンスの宗教画

f:id:Agathateachs:20210717161029j:plain

レンブラント 夜警

f:id:Agathateachs:20210717161051j:plain

フェルメール 真珠の耳飾りの少女

本を読むと、世界が飛躍的に広がります。このセミナーで私自身も成長したいと思います。



 

シャーロック・ホームズ

鏡は横にひび割れて、より(P53 第3章 No.2)

「まあ、なんという言い方ですの?」
「そうではありませんか?それはともかくとして、あなたはパセリが夏の暑い日にバターの中に沈み込む深さからでも、推理できる人だ。私は前から感じていましたよ。シャーロック・ホームズがなつかしいですなあ。今ではもう時代遅れなのでしょうがね。それにしても忘れられない存在ですよ。」

“ That’s an outrageous thing to say! “
“ Isn’t it? However you can always make do with the depth the parsley sank into the butter on a summer’s day. I always wondered about that. Good old Homes. A period piece, nowadays, I suppose. But he’ll never be forggoton.”

 

f:id:Agathateachs:20210704154054j:plain

 

 1890年生まれのアガサ・クリスティーにとって、30才以上年上のコナン・ドイル(1859年生れ)は、どのような存在だったのでしょう? アガサが生れたころには、前後して『緋色の研究』(1888年『四つの署名』(1890年)を発表していたコナンドイルは彼の生み出した探偵シャーロックホームズが人気を博していました。

 ビクトリア朝が絶頂を迎えていたイギリスはその成長と共に、都市の矛盾が現われていたころでした。

 

f:id:Agathateachs:20210704154145j:plain

 

著作”鏡は横にひび割れて”の中で、彼女のホームスに対する思いが垣間見えます。
登場人物の口を借り、もう時代遅れ、と言い放ちながら、あわてて「忘れられない存在」とも、穴埋めするように付け加えています。